「教育虐待」という言葉をご存知でしょうか。2010年代になって広まった言葉です。児童虐待の一種で、「教育熱心過ぎる親」などが過度な期待を子どもに負わせ、思う通りの結果が出ないと厳しく叱責してしまうこと。そしてこれは子どもによかれと思っているケースが多く、親にはそれが虐待になっていると自覚がないことがあります。「教育虐待」息子を立派に育てるのは親の責任と本気で思っていた私がまさにそうでした。その後息子が不登校になったときも、この子のためにと必死に学校に戻そうとしたこともそれに当たるのかもしれません。そこで今回は、教育虐待と防ぐために親が意識したいことをご紹介します。
「教育虐待」とは
学習塾やスポーツなどの習い事など親が子どものために「よかれと思って」行う教育やしつけが「やりすぎ状態」になることで児童虐待の一種です。子どもが傷つき耐えられる限界まで教育を強制することです。
親は気付かずに行っていることが多く、例えば下記のようなことが該当します。
●受験勉強のため秒単位でスケジュールを管理する
●英語塾で100点が取れるまで友達と遊ぶことを禁止する
●素振り1000回ダッシュ100往復が終わるまで寝ることを許さない
いくら子どものことを思ってのことでも冷静になると「やりすぎだな」と分かるのですが、その渦中にいるときには、それが全てであって、部外者は放っておいて!子どもの人生を豊かにするためのこと!と気付くことができません。この教育虐待とは2011年「日本子ども虐待防止学会」において「やりすぎ教育」の著書で臨床心理士の武田信子先生が「子どもの受忍限度を超えて勉強させるのは教育虐待に当たる」と発表したことからだと言われています。
私も読みました!「やばい!私教育虐待していたんだ!・・と改めて思い知りました・・」少しでも思い当たったらぜひ読んでおきたい一冊です。
教育虐待になってしまう背景
教育虐待、やりすぎ教育。そう言われても、どこからが当てはまるのかはっきりとして定義がありません。甘えや過保護と何が違うのか。何れも大人が子どもを思う気持ちには変わりません。そして育児放棄や身体的虐待のように、決して憎いと思ってやっていることでもありません。どうして子どもを愛する形が教育のやり過ぎという形になったのでしょうか。
それは教育虐待と呼ばれるほど熱心に子どもに教育することの背景に「短大や大学への進学率」も関係しているかもしれません。
令和3年度学校基本調査「抜粋記事」
○ 高等教育機関(大学(学部)・短期大学(本科)入学者,高等専門学校4年在学者及び専門学校入学
者)への進学率は83.8%で,前年度より0.3ポイント上昇し,過去最高。
大学(学部)・短期大学(本科)進学率は58.9%で,前年度より0.3ポイント上昇し,過去最高。
大学(学部)進学率は54.9%で,前年度より0.5ポイント上昇し,過去最高。
専門学校進学率は24.0%で,前年度と横ばい。
現在の子どもの教育のゴールが変わったこともあるのかもしれません。より難しく有名な大学への入学を目指して親子二人三脚で頑張ってきた時代から、勉強だけではないスキルが求められる時代になりました。英会話力、プログラミング力、答えがない中で自分で答えを出す創造力、プラスαの力を求められこれも必要これも大事と教育の幅が広がっています。また少子化も進み子どもへ掛けるお金や時間が増えたことも関係しているのかもしれません。
教育虐待の親のタイプと8つの具体例
私は教育虐待を知れば知るほど私に当てはまり・・これは息子はきつかっただろうなと思っています・・教育虐待をしてしまう親のタイプと具体例をいくつかあげてみます。
- 「自分の理想や夢を子どもに託すタイプ」自分のコンプレックスから志望校や職業など本人の意志や希望を確認せず親が決めそのために必要な教育を強いる
- 「理想の母をこなしながらも自分自身が満たされていないタイプ」キャリアを捨て子育てを始めたときなど、仕事へのエネルギーが子どもへ向かい強い教育に熱が入りすぎる
- 「子どもを幸せにすることが良い親だと思っているタイプ」親は子どもに言うことを聞かせコントロールするもの。子どもが好きな習い事や趣味なども成績アップのためにならないと判断したものはやめるようコントロールする
- 「やればできると自分の成功体験を持つタイプ」やってみないとわからない。やらないからできない。自分はできた。失敗も経験だと子どもの気持ちを無視し何でも一歩も踏み出させようとする
- 「周りの人に褒められるために子どもを育てているタイプ」自分の親、夫の家族などからの物言わずぬプレッシャーを感じ認めれれるために、いい嫁だ。いい妻だ。いい孫だとの期待に応えるために無理に教育に打ち込む
- 「自分自身が高学歴タイプ」成績がいいのは当然。わからないなんて理解できない。自分が充実していた分最低でも自分の同じレベルの大学に入れないと幸せになれないと思いこんでいる。
- 「自分が比べられて育てられた劣等感タイプ」 お姉ちゃんは優秀ね。お兄ちゃんはスポーツ万能ね。など兄弟と比較されて育った親は無意識に「劣等感」があり兄弟の子どもたちに負け、自分が馬鹿にされないために厳しく教育する
- 「エネルギッシュなやりすぎタイプ」 もともとなんでも一生懸命に取り組みやりすぎの傾向にある。自分自身が「子育て」「教育」と初めての事に全力でトライしていることが子どもに負担をかけてしまっている
こう書くと・・じゃあどうしたらいいの思ってしまいますが、子育てに親の想いもあって当然です。気をつけなければいけないのは「やりすぎていないか」ということ。子どもの希望ややりたいことと一致していないこともわかっているけれど、それでも「この子のため」「よかれと思って」と突っ走らないようにしたいものです。
8つの教育虐待チェックポイント
過保護?過干渉?しつけ?教育?教育熱心?教育虐待?自分がどの様な形で子どもと関わっているのか自分ではなかなかわからないものです。自分が子どもにしていることは絶対に教育虐待ではないと自信を持たない様に気をつけましょう。教育は子どもの数だけ違っていいのです。迷っていいのです。間違っていいのです。「この方法が絶対だ」と思いこんでいるとしたら「教育虐待ではないか」と自分に問いかけてみてください。
□頭ごなしに話していませんか?
□子どもは自分と別の人生だと思えていますか?
□応援しているのは子ども本人が頑張りたいことですか?
□子どもの人生に自分の人生を重ね合わせていませんか?
□成績などのわかりやすい評価で子どもの価値を決めていませんか?
□対子どもではなく自分の人生を持っていますか?
□子どもを思い通りにしていませんか?
□そのよかれは自分の価値観ではないですか?
いくつチェックが入りましたか?このチェックは数ではなくて「心」を見つめ直すものです。
★迷いながらも「大丈夫」・・と思った人は問題ありません
★いくつか当てはまる・・と思った人は「その点を改善していけば大丈夫」
★迷いなく「絶対に私は大丈夫」と言える人は注意が必要です
教育虐待とは親の意のままに子どもをコントロールしていないか。「子どものため」を言い訳に自分が思うように子どもを動かしていないか自分に問いかけてみてください。
教育虐待をしないために親が気をつけること
教育虐待という言葉を世間に広めたとされる武田信子先生によると教育熱心な親は「子供の幸せ」を望んでいるのに対し、教育虐待をする親は「親としての成功」を望んでいるのだそうです。先に上げた具体例はチェックなどで、思い当たっても、自分は絶対教育虐待をしていないと否定せずゆっくり自分を振り返ってみてください。子育てに迷いはあっていいのです。迷いながらでも子どもを思う姿を見て子どもは自分に対する愛情を感じていくはず。子どもに迷ってもいい姿を見せることも大人として大事な役割です。そして少しだけ子どもの習い事や勉強から目を離してみてください。
- 子どもをまわりと比較しない
- 子ども視点で物をみてみる
- 子育て以外の興味を持つ
- 不安や疑問を感じても一旦は子どもに任せてみる
- 自分を振り返る
- 子どもを1人の人間として扱う
- 勉強の指導は学校や塾にお任せする
教育虐待とは悪者探しのための言葉ではありません。日本では競争的な教育環境がありそれに巻き込まれていないか振り返って確認してもらうための言葉です。よかれと思って傷つけてしまっていないか。同じことをされたら自分では耐えられるのか。親と子どもが一体化していないか。このコラムに目が止まったその時が考えるタイミングなのかもしれません。「子どもは子ども。親は親」です^^子どもの教育だけに打ち込まず。自分の人生を楽しむことも考える時期の始まりです^^今日お読みいただいた方のこれからのご自身の人生が豊かになりますように。私も子どもと一緒に迷いながら成長していきます^^